「中井久夫ドクターの箴言(しんげん)
☆ この欄で何回か紹介した精神科医中井久夫さんがこの八月八日に亡く なられ、NHKEテレ(100分de名著)「中井久夫スペシャル」が この十二月放映された。解説者は斉藤環ドクター。
  中井久夫さんは最初は京都大学の法学部に入学されていたことを改め て知った。入学後結核に罹患され、その後医学部に転部。初めはウイル ス研究をされていたが精神医学に関心を移され精神科医となられてい  る。それから終生統合失調症とは何かということを核に、その問題を「人 文科学の助けを借りてこれを解こうとした」とも書かれている。
  また中井ドクターは、多才な人で箴言とも言えるメッセージを多く遺 されている。
  斉藤環さんは中井ドクターを尊敬しながらも、NHKテキストにはこ う書かれている。「・・・私は中井を敬慕するものですが、そうかとい ってあたかも『不世出の天才精神科医』のよう、神棚に祀るつもりもあ りません。いつも平場で患者と対話していた、・・・」と。
  病を治そうとするのではなく、患者の心に寄り添うというを大事にし た中井ドクターは、統合失調症について脳の疾患という捉え方だけでは なく、文化的歴史的視点でも多くの著作が遺されました。
☆ 箴言という形式で様々に出された中井ドクターメッセージ。今年の感 じは「戦」ということにちなんで中井ドクターからの「戦争」対するメ ッセージのいくつかをご紹介
   ◎ 一般に戦争には自己収束性がない。戦争は自分の後始末ができ    ないのである。
   ◎ 成功した戦争は少なく、また戦争後遺症は予想外に永続的であ    る。
    ◎ いかに戦争を終結し、その後遺症を防ぎ、平和を構築するかが    非常に重要である。しかし、後遺症をできるだけ少なくするよう    な戦争の終え方と、戦争を防止する積極的な平和構築については,    戦争の準備以上の巧緻智と見極めと断念と決断とを要するもので    ある。                 
 
☆ 関心を持たれた方はNHKテキスト(600円)をどうぞお買い求め 下さい。世界では各種の戦いが続いています。ここから何を学び、新た な視点を得て病や社会を見てゆくのかが問われる新年がやってきます。 改めて社会的存在を再確認し出来る限りお互いが助けあう社会を目指し てやってゆきましょう。                 (禿)

編集後記