**********3分クッキング**********

〔お話へ戻る〕 〔TOP〕


  昼過ぎに目が覚めた。
カーテン越しに太陽の熱い光が差しこんで暑い。
 「んっ、もう昼?」
目を閉じたまま隣にいるはずの圭に声をかけたつもりだった。
が、返事はいっこうに返ってこない。
意識はもうろうとした中で隣を探してみた。
 「あれ?圭?」
パフパフと手探りで探がしてみたが手にあたるのはやわらかいシーツだけ・・・。
不思議に思い、まだ眠りたいという目蓋を薄く開けてみた。
いつもは映るはずの恋人の姿は今はない。
 「あれ、圭?どこにいったんだろう・・・。」
僕はまだ目覚めきっていない重い身体を引きずりながらも圭を探すことにした。
寝室のドアを開け、1階に通じる階段を下りていく。
すると、台所の方から音がしてきた。
 「圭?何してるの?」
そこには、エプロンをつけた圭の後ろ姿があった。 
 「あぁ悠季、おはようございます。」
丁度、圭は野菜の皮をむいていたらしい。
 「うん、おはよう。」
そう答えると、僕らは『おはようのキス』をした。
顔に当たる圭の手が冷たい・・・。さっき水で洗ったからだ。
 「・・・・んっ・・・・ふぁ・・・・。」
やっと離してもらえた僕の方は、もう息が上がっていて。
圭の方はというと・・・・・、全然だ。
 「で、圭、何を作るつもりだい?」
 「はい、簡単で誰にでも作れるということでコレにしました。」
 「コレって・・・?」
そう言いながら、圭が用意した材料を見てみると。
人参・じゃがいも・玉ねぎにお肉・・・・そしてカレー粉が置いてあった。
 「カレーを作るきかい?」
 「そうですが・・・、もしや嫌いでしたか?」
 「そんなことないよ。うん、簡単で誰にでもできるよね。」
 「はい。では、君はシャワーを浴びてきてください。」
 「わかった。でもその後僕も手伝うよ。」
 「いいえ、大丈夫ですよ。それに君は疲れているのですから。」
 「それを言ったら、君もだろ。」
 「いえ、僕の方は大丈夫ですので、早く浴びてきて下さい。」
そう圭に優しく背中を押されてしまった。
 「う”〜わかったよ。じゃぁ任せたよ。」
僕にはもうそう答えるしかなくて、お風呂場へといそいそと歩いて行った。

 

  気づいた時にはもうあれから1時間も経っていた。
風呂から上がって、寝室で寝転んでいたところ、本当に寝てしまったらしい。
慌てて1階に下りてみると、カレーの食欲を誘う香が広がっている。
 「圭、ごめん!寝ちゃってたみたい。」
そこには出来たばかりのカレーが盛り付けされていた。
 「今から呼びに行こうと思っていたのですよ。丁度良かった。」
圭にニッコリと微笑まれてしまった。
 「ごめんね、ホント。」
 「気にしないでください。それより、冷めないうちに食べませんか?」
 「あっそうだよね。食べよっか。」
僕たちはそれぞれ席に着き、「いただきます。」と圭が作ったカレーを食べ始めた。
 「うん、美味しいよ。」
そう僕が言うと、
 「ありがとうございます。」
と、少し照れたように言った。
  あまり食が太くない僕だけど、せっかく圭が作ってくれたんだからってことで、
2杯目のお代わりをすることにした。
まだあるかな?とカレーの鍋を覗いてみると、
そこにはまだ数人が食べれるほどのカレーが残っていた。
 「・・・・・・圭、一体何人分作ったの?」
 「はて?どうだったでしょう・・・?ちょっと待ってください。」
すると圭は、カレー粉が入っていた箱を持ってきた。
そしてその裏を見て、
 「10皿分と書いてありますね。」
とさらりと言った。
10皿分って・・・・、食べるの僕たち2人だよ・・・・、圭。
 「じゃぁ、今日と明日はカレーだね。圭。」
 「・・・・・はい、そうですね。」

―――その後、カレーが全部なくなったのは、次の日の朝だった―――。

 


  レーを作るといつもたくさん残ってしまうんですよね。
それにしても題名「3分クッキング」・・・、あまり本文と関係ないですね(笑)

                   〔戻る〕