**********暗闇の中で**********

〔お話へ戻る〕  〔TOP〕


  11月にもなると、寒さが増し、日が暮れるのが早くなる。
 現在、腕時計の針が差す時刻は8時―――。
辺りはもう闇に包まれていた。
 「もうこんな時間になっちゃった。圭、まだ帰ってないといいけど・・・。」
寒空の中僕は、独り言を呟きながら、家路へと急いだ。
  

  だが、歩くこと数分、後ろの方から
『―――カツン―――カツン―――。』
と、人の歩く足音が響いてきた。
この時間、外を歩く者は数少ない。
そんな中で自分の後ろに人の足音を聞いてしまうのは、あまりいい気分じゃない。
『―――カツン―――カツン―――。』
その足音は、イヤでも僕の耳に響いている。
 やだなぁ〜、早くどっか行ってくれないかな。
僕はそんなことを思いながら、歩いていた。

  

 しかし、僕の願いも虚しく、その足音はずっと僕の後をついてくる。 
あれから数十分歩いたはず・・・・。なのに・・・。
僕はなんだか怖くなり、少し早歩きで歩くことにした。
すると向こうも早歩きに変わったではないか!
おかしいと思うと同時に、恐怖という感情が芽生え、
僕は走り出しだ。
だが、僕が走り出す音と一緒に後ろの奴も走り出す音がしたのだ!
それを聞いた僕の体は、無我夢中で走る。
しかし、僕の足の速さより後ろの奴の方が速いと気付いた。
だんだんと足音が近付いてくる!

 

怖い、怖い、怖い!

 

僕の肩に手がかかった。
ヒャッ!!!!!!!!!!

 

 「待って下さい!悠季!」
 「えっ!」
声をかけてきたのは、圭だった・・・・・・。
だけど、もう遅い・・・・・・・・。僕が持っていた買い物袋は圭のわき腹に
直撃した後だった・・・・・・・・・・。
圭はというと、その場にうずくまってしまった。
 「圭!ごめん!大丈夫?!」
 「・・・・・・・は・・い・・・・・・・、大・・・丈・・・夫・・です・・・・・。」
わき腹を手で押さえ、少し苦しげに答える。
 「本当にごめんね・・・・。」
 「いえ、驚かした僕も悪いのですから、気にしないで下さい。」
幸い、僕が買った今日の夕飯の材料は軽いものばかりで、あまり
深くは入らなかったらしい・・・・。
でも、せっかく買った卵がぐちゃぐちゃだ。

 

 「何でこんなことしたんだよ。」
と歩きながら聞いてみた。
 「君の姿を後ろから見つけたものですから、少し驚かしてみようと
 思ったのです・・・・・・が、怖い想いをさせてしまったらしいですね。
 すみません・・・・。」
圭は、しゅんとなって謝ってきた。
 「うん、怖かった・・・・。もうするなよな。」
そう謝ってきた圭に、僕は少しふくれながらも許してやった。
 「はい、肝に命じて・・・。」
と、圭は真剣に頷いたのだ。

 

 本当に怖かったんだぞ・・・・・、圭―――。

 


 ありきたりなお話にふたりをあてはめてみました。たぶん
皆さまは落ちが最初からわかっていらっしゃったでしょうが・・・。
 それにしても、疑問が1つ。
悠季は8時まで何をしていたのでしょう。買い物にしては長すぎる・・・・。
自分で書いている時も疑問でした。

                〔戻る〕