**********Felt very lone some**********

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―――ピカッッという光とともに、ゴロゴロゴロッという盛大な音が
窓の外で響いている。
 今日は、日本列島に大きな秋雨前線がかかっていて、一日中雨だった。
僕はバイオリンの練習を止め、窓の外を眺めていた。
するとまた、雷が光ったと思うと、今度は今までより大きな音で落ちた。
落ちた瞬間の振動が身体に伝わってくる。
その時、ふっと家中の明かりが消えた。
 「えっ?停電?」
僕は急いで、部屋の電気のスイッチを入れに行った。
しかし、反応はナシ・・・・。
 「停電か・・・。」
僕の声が虚しく部屋中に響く。
明かりが消えたということで、なんだか僕の心までもが暗くなる。
この家に1人・・・。
そう、1人なんだ・・・。
ふとした瞬間に実感する。
僕はまだ1人になることに慣れてないんだと。
でも圭と出会う前までは、アパートで1人暮らしをしてきたのに・・・。
何故なんだろう?
こんなにも寂しいなんて・・・・。
ソファに身体を丸めてうずくまった。
 「圭、早く帰ってこないかな。」
ポツリと呟く。
目を閉じると圭の姿を思い出す。
めまいが髪の先まで乱し、
鼓動さえ押さえきれない。
声が聞きたい・・・。
あの声が聞きたい。
僕を安心させる声が・・・。
僕ってこんなに弱かったのかな。
たぶん、ふたりの暮らしが身体にしみれば、しみる程に
ダメになるんだ。

だから早く帰ってきて、圭―――。

 

 「悠季?どうしたのですか?」
僕の目の前で声がした。
 「んっ・・・?」
僕はあのまま寝てしまったらしい。
 「具合が悪いのですか?」
目の前の男は心配そうに聞いてくる。
 「ん、大丈夫。ちょっと寝てただけだから。
 ・・・・あれ?電気点いたんだ。」
部屋がいつの間にか電気が点いていた。
 「はい、今さっき点いたようですよ。停電だったらしいですね。
 大丈夫でしたか?」
圭はオデコをくっつけながら聞いてくる。
 「うん、ちょっと心細かったかも。」
僕はそんな圭に正直に白状してやった。
 「そうですか・・・。」
圭は嬉しそうに答えた。
 「・・・・・・すごく寂しかったんだ。君のせいだぞ。」
 「僕のせいなんですか?」
 「うん、君のせいだ。僕がこんなに弱くなったの。」
 「それは、それは・・・。では僕が居ないと生きれないようにしてあげましょうか?」
クスッ。
 「なんだよそれ。」
 「そのままの意味ですが。」
 「君が居ないと生きられないように?」
 「はい。」
 「・・う〜ん・・・。じゃぁ、お願いしようかな・・?」
 「任せてください。」
 「うん・・・・。」
圭の冷たい指が、僕の頬にかかった。
うん、なぐさめて・・・。

深い夜明けまで―――

 


 雷嫌いです。ひとりだともっとイヤですね。
それにしても、悠季がとても弱くなってしまいました。
「Felt very lone some」を訳すと、
「僕は心細かった」という意味になります。

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