***************HAPPY END?の編***************

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 「僕の名前?あっ言ってなかったよね。
  僕は、守村ユウキって言うんだ。ヨロシクね。」
と言うと、白くて柔らかそうな手をケイの前に出してきました。
その手をケイはじっと見つめます。
そして、おそるおそる自分の手を差し出し、ユウキの手を
握りました。
 「はい、ヨロシクお願いします。」
握ったユウキの手は、見た目と同じで、とても柔らかく
暖かい。
 この手をもう離したくないと思うケイでした。
 「あの・・、ごめん。手、離してくれないかな?」
ユウキは少し困ったように言います。
 「あっ、すみませんでした・・・。」
ケイはしぶしぶとその手を離しました。

―――ふたりの間に沈黙が続きます。
その沈黙を破ったのはケイでした。
 「・・・・お礼の話でしたが。」
 「あっお礼ね。何がいい?」
ふたりの間は少しギクシャクしています。
 「もし、良ければ僕と踊ってくれませんか?」
 「えっ、踊るの?」
 「はい。・・・・ダメでしょうか?」
 「ダメじゃないけど・・・、その、僕踊ったことないんだ。」
ユウキは恥ずかしそうに呟きました。
 「僕が教えてあげますから。」
ケイはユウキを必死に説得します。
すると、
 「ケイがそこまで言うならいいよ。」
クマのケイは天にも昇る気持ちでした。
 「では手を貸してください。」
 「う、うん。」
ユウキの方も何故か緊張しているようです。
ケイは自分より小さくて柔らかいユウキをやさしく抱き寄せました。
ふたりはゆっくりと踊っていきます。
 「えぇ、そうです。うまいですよ、ユウキ。」
そうケイに耳元で囁かれたユウキはビックッとし、ケイにしがみついてきます。
それを見たケイは頭の中で「この人は耳が弱い」と推測を立てていました。
それからというものケイがユウキの耳元で何度も囁くので、
踊り終えるころにはユウキはフラフラでした。
―――おや?やりすぎましたかね?―――
ケイは地面にしゃがみこんだユウキに手を差し伸べてあげました。
 「すみません、無理をさせてしまったようです。」
 「ううん、そんなことないんだ。ちょっと疲れちゃって。」
ユウキは慌てて真っ赤な顔で否定します。
もうあたりは赤い夕日に包まれていました。
その状況に気づいたユウキは
 「あっ!いけない!もう帰らなくちゃ。」
 「・・・・・・そうですね。では、森の出口まで送ります。」
 「うん、ありがとう。」
ユウキはニッコリと笑いました。
そんな笑顔を見たケイは”寂しい”という気持ちを心の奥底に押し込めました。

森の出口までふたりはたわいもない話をしました。
家族のこと、日常のこと。
でもこうして歩くにつれてふたりの別れが近くなってくるのでした。

 「ケイ、ここまで送ってくれて有難う。」
街はもうすぐそこです。
 「いえ、どういたしまして。」
別れが寂しいのか、沈黙が続きます。
が、破ったのはユウキでした。
 「じゃぁ、ケイ元気でね。」
 「・・・・はい。」
ユウキは街の方へ向って歩いて行きました。
その後ろ姿がだんだん遠くなっていくのをケイは苦しい思いで見ていましたが、
 「あ、あの!」
ケイがユウキに叫んだのです。
 「僕はユウキが好きです!」
突然のことで一瞬ビックリしましたユウキでしたが、
 「僕も好きだよ!」
と叫び返したのです!
それを聞いたケイはとても嬉しくてユウキを抱きしめにいこうとした時です。
 「うん。だから友達!」
・・・・・・・ト・モ・ダ・チ・・・・・・・・?
・・・・・・・友達?
・・・・・・・友達ですか?
 「あ、あのっ!」
ケイが叫ぼうとするときでした。
 「また明日会いにくるね!」
ユウキはそう言って大きく手を振り
街の方へかけて行きました。
とり残されたケイは、その場に呆然と立ち尽くしてしまいました。
 「そういう意味ではないのですよ、ユウキ・・・・。」
ケイの声が虚しく森に響いてしました。

 

こうしてケイの恋は前途多難というスタートをきったのでした。

 

END


無理やり終わらせてしまいました。
一応完結ということで許してください。
当初考えていた終わり方とは違うのですが、こういうおちもいいかな?
っと。ちょっとかわいそうなケイでした。

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