**************忘れ物?編***************
またもや、ユウキは必死に走ります。
すると、後ろの方から声が聞こえてきました。
「・・・・・・・・す・・・・・・・・・で・・!!」
その声は途切れ途切れと聞こえてくるので何を言っているのかわかりません。
気になったユウキは、遠くから追いかけてくるクマに耳を
傾けました。
「忘れ物です!待ってください!」
と、クマのケイは必死に叫んでいます。
「忘れ物・・・?もしかして、僕のバイオリン!?」
そう確信したユウキは立ち止まり、クマが追いつくのを待ちました。
「はい、君の忘れ物ですよ。」
追いついて来たクマから渡されたものは、バイオリンと水筒、お弁当が
入ったバスケットでした。
大切なバイオリンが戻ってきたことに安堵し、心からクマに感謝を述べます。
「ありがとう、クマさん。」
「ケイと呼んでください。」
「えっ、ケイ・・・・・?」
突然のことに少し驚き、首を傾けました。
「はい、僕の名前です。」
「そうなんだ、ケイって言うんだね。」
ユウキはすっかりクマのケイに心を許してしまっていました。
「そうだ、お礼しなきゃ!」
ユウキは思い立ったように言いました。
「・・・・お礼ですか・・・・?」
今度はケイが首を傾げる番です。
「うん、バイオリンを届けてくれたお礼!」
「それは・・・・、驚かした僕が悪いのですから、届けるのは当たり前です。」
ケイは少し困ったように答えました。
そんなケイを見たユウキは、首を激しく横に振り、
「そんなことないよ!驚いた僕が悪いんだ。だって、こんなに優しい君なのに・・・・。
ごめんね・・・・。」
と、言いました。
「気にしないで下さい。元から僕はこういう姿なのですから。」
少し落ち込んだ雰囲気のユウキを、ケイは優しく励まします。
そんなケイの優しさに触れたユウキは、
「ありがとう。」
と、もう1度心を込めて言いました。
ケイの方はというと、ユウキが微笑むたびに、心臓がドクンドクンッと激しくケイを打ちつけています。
「あっ、お礼の話だったよね。でも、豪華なことはしてあげられないんだ、ごめんね。」
そんなユウキに、
「いえ、お金などいりません。それより、君の名前を聞かせてくれませんか?」
果たして圭の恋は成就するのやら―――。
・・・・・・・・・To be continued・・・・・・・・