■■■■■Merry Christmas 第2話■■■■■
「誰なんですか。」
その男の子はするどい目で悠季を見ます。
悠季の方はというと、あまりにも突然のことに思考回路が止まって
しまっているようです。
「何も言わないようでしたら、警察を呼びますよ。」
そう男の子に言われ、やっとのことで悠季の脳も働きだします。
「あっ、決してあやしい者じゃないんだ。」
「こんな夜中に人の部屋に侵入してあやしい者ではないと?」
その男の子は大人かおまけのしゃべり方をします。
悠季の方はたじたじになりながら弁解する、
臆病な”サンタ”です。
「違うんだ。えっと、僕”サンタクロース”なんだ。」
「・・・・・”サンタクロース”なんですか?」
「うん、そうだよ。」
するとその男の子は少し黙って、考え込んでいるよう
でした。
「”サンタクロース”は存在しないのではないのですか?」
少しの間をとり、男の子が真っ直ぐな目で悠季を見ながら言いました。
「ううん、ちゃんと居るよ。げんに僕がその”サンタクロース”
なんだけどね。」
「僕が習った”サンタクロース”はヒゲがあり、ふくよかな老人
ですが?」
「あっ、うん・・・。・・・・そうなんだけどね。まだ僕には
ヒゲもないし、太ってもないんだけど・・・、いつかそうなれると思う。」
「そうなんですか・・・。」
それ以来男の子は黙ってしまいました。
ふたりの間に沈黙が続きます。
悠季はどうしていいのかわからずにただ立っていることしかできません。
まだまだ未熟な”サンタ”でした。
「・・・・・”サンタクロース”は本当にいたんですね・・・・。」
ふいに男の子が独り言のように小さく呟きました。
「君は今まで”サンタ”はいないと思ってたの?」
悠季は男の子にそう質問しました。
「・・・・はい。一度だけ少し信じた時がありましたが、”サンタクロース”は
きてくれませんでした・・・。」
男の子は少し小さな声で言いました。
「・・・そっか。ごめんね。
でも今年は強く”サンタクロース”に会いたいと願ってくれたんだね。」
「そうなんですか?」
「うんそうだよ。心の奥底で願ってくれたんじゃないかな?
じゃなきゃ、僕はここにはいないよ。」
悠季は笑って答えました。
「”サンタクロース”はね、本当に信じてくれている子のとこにしか現れないんだ。
だから君は心のどこかで僕に会いたいって思っていたんじゃないかな。」
「そうなんですかね。学校の友達が楽しそうに話していたので、
少しうらやましく思っていたんですが・・・・。」
男の子は少し照れた口調で言いました。
「そうなんだ・・・。じゃぁはい、君のプレゼント。」
悠季は男の子にプレゼントを渡しました。
「・・・あけてもいいですか?」
男の子は少し緊張した声で聞いてきました。
「うん、どうぞ。」
男の子はぶきっちょな手でラッピングをそろりそろりと解いていきました。
悠季はその様子をじっと見ています。
「気に入るかな?」
悠季はやさしく言いました。
箱を開けるとピアノの形をしたオルゴールが顔をだしました。
それをゆっくり開けると、やさしいオルゴールの音が流れ出しました。
「・・・・・綺麗な曲ですね。何という曲なんですか?」
「それは『星に願いを』という曲だよ。
どう?気に入った?」
「はい、とても気に入りました。一生大事にします。」
そう言った男の子は真剣でした。
「そう良かった。じゃぁ僕はそろそろ行くね。」
悠季はそう言うともと来た場所から外にでようとしました。
「また会えますか?」
男の子が背中越しに悠季に聞いてきます。
「君がその曲のように星に強く願ってごらん。そしたら僕はまた君に会いに来る。」
「きっとですか?」
「きっと。約束するよ。」
そういい残すと悠季は外に出て行きました。
「圭様?こんな夜中にどうされたのですか?」
男の子の部屋がノックされ、人が入ってきました。
「・・・・伊沢、”サンタクロース”は本当に居たのですね。」
圭という少年は窓の外を見ながらそういいました。
窓の外にはシャンシャンという音と共に”サンタクロース”が
ソリに乗って空に駆け上がって行く姿が見えました。
「また、”サンタクロース”に会えますかね。」
圭は伊沢に問い掛けました。
「ええ、圭様が強く信じていれば必ず会えますとも。」
「―――そうですね。」
こうして今年も”サンタクロース”の仕事は終わっていくのでした。
―――END―――
クリスマスのお話はどうでしたか?
このお話を考えたときは23日でした。
予定通りに2話で完結してよかったです。
終わらなくても無理やりおさめる気でしたが(笑)
それでは良いクリスマスを。
Merry Christmas!