7場
いつかわかる日が来る、その日まで…
年が明けた。男は大汚染忘年大会の2次会「バトルトークライブinケント1階」で指導スタッフの熱い息吹を吸収し、リニュ−アル男となって正月中ゴロゴロしていた。
1月最初の練習で男は、ゆいちゃん&倒れたゆいちゃんを助ける役名てるみちゃん(悲しい別れだけど…でおなじみ)と相談して、彼女をなぎ倒す方向を変える提案をした。ゆいちゃんを目立たせたかったのだ。木村先生「やっちゃってください。」
カーテンコールの練習が始まり、妖怪たちも初めて「すきさすきさ」に乗って、素顔でステージ最前列に進む機会を与えられた。吹奏楽とも合流し、これまで繰り返し演じてきたシーンもボルテージが上がってくる。そんな折も折…。
…死神の死の矢が、フライングをおかしてしまったのか?
男がそのことに気付いたのは1月最後の練習の時だった。
「こないだから富岡さんばっかり…」
13日のあいちゃん、出雲さんが姿を見せない。
ほどなくして男の耳にもウワサが流れてきた。練習外でのアクシデントらしい。首だとか背中だとか、例によってウワサ話というやつは錯綜しがちだ。「13日どうすんねん」という言葉を誰もが飲み込んだまま、練習日程は消化されていった…。
きみがいるから 〜 Girl be Back
状況を把握できなかったせいで、男だけが焦燥にかられていたのかも知れない。
「…ぼく、心配してました」わしゃ、さとるちゃんか。
それだけに男の安堵は大きかった。本番6日前のゲネプロ(総合リハーサル)に
出雲さんが戻って来たのだ。いつもと同じ、元気な出雲さんだった。いや、ほんとはまだどこか痛かったのかも知れないが、本人に確認してないので良く分からない。「聞きゃいいじゃん」と思うだろうが、相手はあいちゃんだ。雲の上の存在に、わたしら大部屋俳優がどうしてまともに口がきけよう?サインぐらいは貰っとくべきだったかも知れないが…。
ほっとして気がつけば、もうあと一週間ですべてが終わりだ。
首領も死神も、天使、雨の精、捜査官も妖怪どもも人間に戻って現実の中に消えてゆく。終幕の喝采は、夢の終わりを告げる目覚ましのベルか…。男の心に寂寞の風がかけぬけた。本番直前で本来ヒートアップすべきところが、どーも変な感じだ。
「これ終わったら、冬眠しよーかな〜」
|