**********ユウキ、逃げる!編**********

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  振り返ったそこには、想像もしていなかったほどの大きな
クマが立っていたのです。
  突然のことでユウキは固まってしまいました。
固まったユウキをクマのケイはじっとみつめます・・・・・・・・・。

  どれだけそうしていたのでしょう。数分後、やっとのことでユウキは
恐怖の呪縛から目覚め、今、自分が大変な状況に置かれていることに気づきました。
ユウキはおかあさんに言われた言葉を思い出します。
 「気を付けて行くんだよ。森にはクマがいるからね。」
 ごめん、かあさん、クマに出会っちゃった・・・・。
ユウキの体中からは冷たい冷汗が出てくるのがわかります。
  どうしよう、どうしよう・・・・・・。そうだっ!よくかあさんが、「クマに会ったら、死んだ
ふりをするんだよ」って言ってたっけ・・・・。
そう思うと同時に、ユウキは、コテッっと倒れてしまいました。

  驚いたのは、クマのケイです。ユウキに見惚れていたところに、
その本人が突然倒れてしまったのですから・・・・・。
  ケイはどうしたのかと、倒れたユウキの顔をのぞき込みます。
もしかして、具合が悪くなって倒れたのかと心配しますが、
顔をユウキに近づけてみると、ちゃんと息はしています。
するとケイに、ある考えがよぎりました。
  もしかして、この人は死んだふりをしているのでしょうか?よく人間は、
クマに会ったら、「死んだふりをしなさい」と言っていたのを聞いたことがあります。
しかし、今まで僕に会って、死んだふりをした人はいなかったのですが・・・・。
  そうです、大抵の人間はクマのケイを見て驚いて逃げていってしまうのだから。

  倒れたユウキの方はというと、今にも飛び出してしまいそうな心臓をかかえながら
必死に、死んだふりをしています。
  早くどっかいってくれ!お願いだから・・・・!
そんな、ユウキの願いも虚しくクマはじっとユウキを見つめている様子です。
  どうしよう、このまま食べられちゃうのかな。かあさん、ごめん・・・。
 その時です。ユウキの顔に生暖かいものが触れてきました。
ふさふさとした毛が生えており、するどい爪があるのがわかります。
クマの手がユウキに触れているのです。
ユウキの心臓はドクンッと大きな音を立てました。それに反応して、ユウキの身体も
ビクンッとしてしまいました。

  それを見たケイは、ホッとしました。
  やはり、死んだふりをしていたのですね。それにしても死んだふりをする人は、初めて見ました。
しかも、こんなカワイイ人で。肌も白く、やわらかいですし、手触りも最高だ!
さて、どうしたものでしょう。恋愛というものは最初が肝心と言いますからね。まずは、名前を尋ねなくては・・・・・。
と考えています。

  するとクマのケイはユウキの頬をパチパチと叩き、
「すみません、死んだふりをしているのは分かっていますが、何もしませんので起きてくれませんか?」
そんなクマの声を聞いたユウキは、またもビクッと身体を震わせました。

  どうしよう・・・、死んだふりがバレてる。しかも何もしないからだって!
そんなことあるわけないじゃないか!起こして僕を食べるつもりだ!

ユウキは疑り深かったのでした。

  すると突然、ユウキがパチッと目を開けたと思うと、叩いていた手を振り払い
スタコラサッサと逃げてしまったのです。
突然のことに、今度はクマのケイが呆然と立ち尽くしてしまいまいた。

                                  ・・・・・・・・・To be continued・・・・・・・・

 


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