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 雪舟の風景   第八部 晩年編
37. 山寺東光寺
 「牛庵御奉公之覚書」の中に「雪舟(中略)極老にて石見之益田へ被罷越於彼地落命仕候」とあることから、雪舟は老齢で益田を訪問し、益田の地で死没したという説が有力になっている。牛庵は益田城第20代当主益田元祥の号で、この「牛庵覚書」は牛庵が毛利輝元に提出した文書を明暦4年(1658)筆録したものである。
 この寺は白水山と称し、後に妙義山と改められ、俗に山寺と言った。雪舟が晩年、益田を再訪した理由も「大喜庵記」に書いているように、一にこの地が風光絶景の地であるばかりではなく、周鼎と親しく交際していたあこがれの土地であり、彼が住んでいた東光寺をこの上なく崇敬していたからであろう。雪舟は本尊観音菩薩の前にぬかずき、酒をくみ、尺八を奏でた後で、水墨画を描いていたが、ついにこの地において文亀2年(1502)に83歳の生涯を終えたと言い伝えられる。 
 雪舟の遺骨は東光寺の丘に埋葬され宝篋印塔(ほうきょういんとう)が置かれていたが、宝永のころ摩滅して退廃したので土地の人によって再建された。その雪舟の墓は高さ160cm、台石2段の上に扉を設けた石室を置き、その内部に「石州山地雪舟廟」と記され、石室内には雪舟の旧墓の相輪の部分が納められている。



雪舟墓
38. 大喜庵(雪舟寺)
 雪舟の死後、東光寺には雪溪芳白、益田長清、大谷知勝と相次いで入山し、天正2年(1574)には仏肝が仏門に帰依した仁保成隆と入山した。成隆は天文20年(1551)に大内義隆が陶晴賢のために長門(山口県)の大寧寺で敗死した時、逃れて来たのだった。
 東光寺全山が焼失した後、跡地に仮礼拝堂が建てられたが、間もなくこの小堂も朽ち果ててしまい、慶長5年(1600)の関ヶ原の戦いの後は、益田城主益田元祥が長州に移り、仏閣への保護が絶たれてしまったので東光寺一帯は叢林(そうりん)と化した。
 やがて、元禄元年(1688)になると、大喜松祝は役の行者縁の大峰山で修行中、夢告により荒廃した東光寺跡の聖地に小庵を建立しようと計画した。藤井氏は平素より松祝に帰依していたので、喜んで土地を寄進し、近所の人々の奉仕によって元禄15年小庵が完成し、大喜庵と名付けられたが、いつの日か、雪舟寺と伝承されるようになった。


大喜庵(雪舟寺)
39. 画聖顕彰
 雪舟の生涯はまさに禅と絵と旅で明け暮れした。旅が禅の道場でもあった雪舟は旅先の臨済宗系の寺に仮宿し、地方の人々には教えを説き、あるいは絵の指導をしながら、旅を続けた。従って雪舟の足跡は日本各地に点在し、多くのファンを集めている。雪舟に関する伝承や山口市の常栄寺など雪舟庭園が、きら星のようにあるのは雪舟がその地を歩いたであろうという証明のようなもので、地区の人はその遺跡を大切に保護することが肝要であろう。
 雪舟の終焉(しゅうえん)地と伝えられる益田では大正15年、雪舟終焉地保存会を起こし、大喜庵を整備するために拠金を募って、整備した。
 加えて、平成2年、雪舟の郷記念館がオープンし、大正15年に始まった雪舟顕彰会の夢が実現したので、その時分、関連付けられていた日本各地の画家たちと大喜庵との結びつきを今一度、平成の時代にも呼び起こそうとしている。雪舟のもつ魅力はいくら述べても語りつくすことはできない。ともあれ、益田の人は画聖雪舟を「雪舟さん」と呼んで、殊に雪舟さんの墓は四季を通じて花の香が絶えたことはない。



大喜庵復興碑
(昭和4年建立)
40. 雪舟の郷記念館
 記念館は、平成2年に雪舟禅師銅像とともに竣工。人麿と雪舟の町・益田の歴史文化ゾーン「雪舟山水郷」の核として雪舟終焉の地に隣接している。建物は中世寺院様式をモデルにした和風建築で、天童寺(中国寧波市)を模した茶色の瓦葺きが落ち着いた景観を醸成し、周囲には雪舟死没の地といわれる大喜庵や小丸山古墳を望むことができる。
 館内のロビーから眺められる枯山水風の本庭(八景園)は、雪舟が描いた「花鳥図屏風」(重文)をヒントに築庭され、樹齢100年を超える松や、竹、桜など四季折々の画趣を楽しむことができる。
 大喜庵と雪舟の墓に通じる和風の回廊からは市街地が一望でき、館内外をゆったりと散策しながら雪舟の薫りを味わうこともできる。
 二つの展示室のうち、第1展示室では、雪舟と人麿ゆかりの資料や作品を紹介した常設展を、第2展示室では雪舟に私淑する現代日本画家の秀作日本画展を開くほか、年間2~3回、雪舟や人麿に関する特別展、企画展を行っている。また、雪舟さんへの顕彰を高めようと茶碗づくりや絵馬づくりに取り組んでいる。


雪舟の郷記念館外観
ますだしりつ せっしゅうのさと きねんかん
益田市立雪舟の郷記念館
〒698-0003 島根県益田市乙吉町イ1149
TEL/FAX : 0856-24-0500
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