温泉津旅情18
入湯宿定書(1776) 安永五年二月
温泉津温泉には今から236年前、すでに温泉津の宿中(現在の旅館組合員)が申し合わせた来客の接遇の約束事がありました 温泉屋を中心に入浴宿の品格を高める内容になっています
定従前の入浴宿の儀で示し合わせの通り、何事によらず相談の上取り計らい申すべく事
一、入浴衆参られ候節も銘々家の外へ立ち廻り相泊め申すこと堅く無用。
尚又、尋ね先これある旨、申されそうらわば、よくよくその先を教え、手引き人相添え通り申すべく事。一、客衆の国、郡、小村、家名など、相尋ね帳面に記し置き申すべく候、別して一人参られ候衆は、親類など、これを承り帳面に相記し申すべく事。
一、諸荷物などハ格別、遺銭の儀ハ、油断なく相預かり申すべく候。もし病気さし起こり候節ハ
早速宿中へ相届け、いよいよ重病に相なり候ハバ、相談をもってこれを取り計らい、万々一、不慮の儀も、出来候ハバ、宿屋中相集まり、随分、世話いたすべく事。一、家衆来られ候節は、亭主他出につき、手前ニて帳面記し申すこと相ならざるときは、
温泉 屋方にて、村名、倭名ハ常の儀ニ候得ハ、国、郡、家名、などまで、具 ニ相尋ね相記し置きもらうべく申す事。一、入浴の致し方
委 しく相教え、もっとも入込の儀ニ御座候得ハ着類、はきものなどに心を付け、譬 失物御座候その吟味相ならず趣、その外、湯中ニて音曲並びニ騒がしきことハこれを停止。もし不承知の時ハ逆上に相なり、入湯いたし難し。よろしく申し聞かせ專一の事。一、宿中吟味いたし
胡乱 なる者相留メ又申さざるよう、こころを付け候。もっとも家衆、博奕 一切諸勝負事相ならず趣、これを述べ申すべく事。一、合い
家 の中ニて口論など相つつしみ並びに酒興長々申さずよう申し渡し心を付け申すべく事。一、木銭壱夜二付二十五文宛、味噌代壱夜二付き五文一分二相極め候。もっとも米代の儀ハ、その
直 段ニよってこれを談じ、この切れ紙に記し置き、その外寝具損料などハ品ニよって取り計らい木銭、味噌代、米代何ニよらず不同これなきよういたすべくこと。一、新義思い付候節も相談いたし、評議次第ニて披露いたすべく事。
一、万事願出、御取り上げこれなき訳も候得バ、万事宿中の外へ持ち出し、堅く無用、兎角。宿中申し合わせ和順ヲ尊として、茫々しく取り計らいいたすまじきこと。
右の条々宿中立会い、相談をもって相定め候上は、違背の儀も出来候ハバ温泉屋方へ申し伝え急度、入浴人宿相止メ申すべく候、そのため、宿中、連印をもって定書いたし置き候ところ
仍而如件
安永五年申二月日
つわのや 権六 薬師道 金次郎 まつや 政之丞
かどや 嘉兵衛 福光屋 伝蔵 あぶらや 重兵衛 こうや 又左衛門前書宿中定の趣、加席仕り承り置き候上ハ、違背の家へ参り候衆、帳面ヲ除キ又、入湯いたさせ
間敷候これにより奥書印形仕り候
温泉屋 重蔵
(藤昇)
(資料 伊藤家文書)
無断での転載を禁止させて頂きます。
泉薬湯 温泉津温泉 元湯