元湯の歴史 その前に
温泉屋(ゆや)伊藤家には1500年代から記録されている古文書が数多く保管されています。それらの古文書の一部を石見銀山が世界遺産に登録される際、歴史文献調査官としていらした元筑波大学教授田中圭一博士らに指南を受け、19代湯主伊藤昇介が歴代湯主の伝承を交え文字に起こし史料として遺しました。
情報化社会の現代において、インターネットが普及し、マスコミのみならず、個人が自由に情報を発信できるようになりましたが、利便性が高まった反面、エビデンスのない誤情報が一気に拡散され、それがあたかも真実かのように伝えられ、歴史が湾曲して伝わっていく状況があります。歴史とは過去に起こった実際の出来事を伝えるものであり、自分たちの都合の良いように後から手を加え作り変えて伝えるものではありません。
「正しい温泉津の歴史、正しい温泉屋(ゆや)の歴史を後世に伝える義務があなたにはある」との田中博士の言葉を受け、19代湯主は田中博士とともに一冊の本を刊行しようと制作に取り組んでいましたが、志半ばで倒れてしまいました。
今回、田中博士と19代湯主の遺志を継ぎ、制作済みの史料の中からいくつかの「エビデンスのある本物の温泉津の歴史」「元湯の歴史」を公開することにしました。
西暦900年、平安時代以前から湧き続ける源泉
千古の歴史を誇る「泉薬湯」のはじまり
元湯温泉の出泉について、「温泉記の釈文」には「石州温泉津の出泉は開闢興基未だ何の代と言うことを詳らかにすること能わず」とあります。しかしながら、平安中期の承平年中(931~938)の辞典「倭名類聚抄」には『石見の国温泉郷の内に「
また、初代(中世)より今日まで「
元湯の歴史
19代湯主伊藤昇介が当温泉利用者向けに2000~2010年頃作成、配布中のリーフレット。
未完のものを含め、37題+番外編があり、それらの中から27題を掲載。
初代より500年にわたり代々受け継がれている湯主の記録。
それぞれの時代で温泉屋の存続に関わる危機が勃発。その記録が詳細に残されています。
参考文献・参考史料(一部紹介)
題 | 年号・西暦・月日 | 作成者 | 摘要 |
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原500温泉(由来)記 | 年不詳 | 芸陽廣島城沙門惟素 | 弘治元年三月と年号あり |
温泉記の釈文 | 年不詳 | 芸陽廣島城沙門惟素 | 弘治元年三月と年号あり |
原410温泉津湯役請取書写 | 年不詳 | 永禄3(1560)~承応元年(1652)まで | |
原663湯役銀請取状 | 元亀2・1571 | 児玉成康 | 茜屋惣兵衛宛 |
原685温泉津湯役請取 | 慶長5・1600・11月30日 | 三源蔵他2名 | 茜屋惣兵衛宛 |
原439温泉一件ニ付江戸表江差上候願書控 | 天保2・1831・7月 | 温泉主直左衛門 | |
原387温泉主治考 | 天保14・1843 | 中原周治 | 平光胤再録 |
原389温泉効記全 | 明和9・1772 | 中原周治 | |
原46入湯人覚帳 | 文化14・1817・1月 | 温泉屋真左衛門 | |
原97入湯御客国所名前帳 | 弘化4・1847・1月1日 | いとうかう一良 | |
原577湯屋屋敷絵図 | 安政6・1859・1月 | ||
原583湯屋温泉場絵図 | 年不詳 | ||
原483定(入湯につき) | 元禄16・1703・8月 | 役所 | |
原489定(入湯規定・鍵湯取立につき) | 享保13・1728・1月 | 湯主甚兵衛 | |
原478大森屋敷よりの入湯者規定につき書状 | 天和3・1683・1月 | 由比長兵衛 | 湯屋庄兵衛宛 |
原465定(温泉につき) | 年欠 | 役所 | |
原461鍵湯定 | 年欠 | ||
原457定(元禄~享保年間、温泉につき) | |||
原468入湯宿定書 | 安永5・1776・2月 | つわのや権六他6名 | |
原447定書之事 | 寛政6・1794・12月 | 薬師堂はつ他6名 | 入湯宿一同引合兼渡世につき |
原943坂名付ケ | 年不詳 | ||
原爆被爆者と温泉津 | 1977・12月 | 別府原爆センター 八田秋 | 第30回日本温泉科学会大会号 |
狸の池のお話(絵本) | 2022・4月 | 元湯温泉縁起創作童話絵本 | |
興亜少年隊 | 昭和16・1月30日 | 神根哲生 | 温泉縁起創作童話 |
藤沢薬報 | 昭和34年2月 | ||
長命館のいろいろ写真館 | |||
揮毫『龍馬』の扁額 | 昭和15年 | 新谷道太郎 | |
子宝記念母子像建立時の新聞記事 | 昭和50年 | ||
元湯と原爆症に関する新聞記事 | 昭和30年頃 | ||
新谷道太郎翁胸像建立時の新聞記事 | 昭和42年 | ||
浅原才市参考文献 | |||
新谷道太郎参考文献 | |||
繫昌温泉番付表 | 明治22年8月 | 正田治兵編纂 | |
飲泉塔吐泉龍建立時の新聞記事 | 昭和63年 |
敷地内散策
元湯の敷地内には、元湯と歴史を共にした縁深い建造物や造形物があります。
それぞれの創られた歴史的背景に触れ、先人たちの偉業を知り、込められた願いを未来につなげてみませんか?