温泉津旅情22
本物の温泉 自然湧出泉と温泉の処女性
温泉地数3,114 源泉総数27,644 平成17年3月末現在環境省統計による全国の数値です。この数は毎年増加するばかりで止まることも減る気配もありません。温泉を持たない市町村はないといえるほど今や、日本中何処にでも温泉がある世界の中の温泉大国です。その上、日本人ほど温泉好きな国民はないといわれます。しかし、一方「温泉好きの温泉知らず」ともいわれているのが昨今の温泉好き日本人なのです。「温泉知らず」とは、どうゆうことでしょうか。考えて見ましょう。
いきなりですが、体を洗う湯、遊ぶ湯、慰安の湯、休養・保養の湯、湯治の湯、療養の湯、日帰り湯、立寄り湯、源泉掛け流しの湯、本物の温泉、まがい温泉、単純温泉、単純炭酸泉、重炭酸土類泉、重曹泉、食塩泉、硫酸塩泉、鉄泉、明礬泉、硫黄泉、酸性泉、放射能泉、アルカリ性単純温泉、カルシウム・マグネシウムー炭酸水素塩泉、ナトリウムー塩化物泉、ナトリウムー硫酸塩泉、アルミニウムー硫酸塩泉、・・・判りますか。現在の「温泉を知らせる」情報です。「温泉知らず」とは、「パソコン機能もパソコン用語も知らず」パソコンを叩いている姿にダブります。温泉は自然界に存在している宇宙の産物です。自然界には湧水が、太古の昔から地表に湧出していました。湧水は不思議な存在であり、人はその場所を神の宿る神聖な所と考えました。この泉薬湯の泉源も60年前までは、この屋の主以外は立ち入ることの出来ない神聖な場所として伝承されてきました。湧水には「わき水」といわれる水と、「いで湯」とか「温湯」とかいわれる「あたたかい泉」、温泉があります。「温泉」の恵みもさることながら、中でも特に疾病病苦に験著な効能のある「温泉」を「霊泉、神泉、薬湯」といい崇めてきました。
温泉が大衆化された江戸時代、大衆が温泉を温泉として認知した温泉は、自然に湧出しているもの。温度の高いもの。効能のあるものが温泉であり、「温湯」であっても銭湯・風呂を温泉と同様には認めていません。それ以外の温泉、温度の低い温泉は沸かし湯、温度の高すぎる温泉はうめ湯といい温泉に手を加えたことが判るように区分しています。「霊泉、神泉、薬湯」といわれてきた温泉は湯治の湯、養生の湯として、温泉の特性をわかりやすく知らせ、疾病病苦の人の病院的役割を果たしてきました。
何故、温泉が病院的役割をする湯治の湯であり、養生の湯でしょうか。昭和に入ってから、温泉が医学面から解明されるようになりました。元九大の温泉治療学研究所長・国立別府病院長高安慎一博士は「温泉には、内分泌または自律神経系統への作用、入浴による体内イオンの変化、刺激作用、などがあり」湯治養生によって起る治癒力の増加に効果があるとの研究結果を発表しています。
また、温泉の持っている天の恵みを享受する理想的な温泉の使い方は、泉源の湧出した温泉の処女水そのものに入浴することであるといわれています。温泉が地表に湧出し空気にふれる前の温泉が、身体に一番よいということなのです。
温泉医学の西方義方博士は「温泉須知」の中で述べています。「温泉は湧出直後には物理・化学・生物学的に不安定な状態にあるが、活性の高い強い作用を持っている。これを私は温泉の処女性と表現したい。これは温泉を利用する上で最も必要なことだが、この活性、処女性は、湧出後数時間にして消滅してしまう。これを温泉の老化現象という」と。地下から涌き出したばかりの温泉には、さまざまな成分が含まれ、強い活性がある。この活性物質の躍動している温泉こそが、私たちに天の恵みを与えてくれる温泉であり、本物の温泉です。人間が温泉と関わってきた永い歴史の中で「温泉」の概念が定着し、「温泉」という二文字に、疑う余地のない信頼が出来上がっています。「温泉」の信頼を裏切らない安心して入れる温泉こそ、日本では本来の本物の温泉といえるのではないでしょうか。
霊泉・泉薬湯元湯温泉は出泉時期そのものは判らないと伝えられている出泉時そのままの、数千年らいの自然湧出泉です。その上、今も、湧出泉源より1~2メートルと極めて至近距離に浴槽があり、泉源から湧出した温泉の処女水が流れ込んでいます。西川義方博士のいう温泉の老化現象が現われる前の活性の高い強い作用を持つ、温泉の処女性を利用出来る理想的な温泉であり本物の温泉です。
(藤昇)
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