温泉津旅情23 飲泉塔 吐泉龍

昭和63年(1988)4月、泉薬湯元湯温泉の前に、源泉のお湯を吐き出す龍の石像が誕生しました。飲泉塔です。ボタンを押すと龍の口から温泉が吐き出る様から吐泉龍の名前が付けられました。飲泉塔吐泉龍建設の完了です。龍尾に宝珠を抱え込み、とぐろを巻いて宝珠を天高く持ち上げ護衛しています。これは二つとない大切な温泉源を守護する龍の姿です。

全高さ2700㎝ 龍高さ1700㎝ 円台直径巾1500㎝
石材龍尾頂部宝球インド産赤御影石
吐泉龍本体ポルトガル産青御影石
円形高杯台中国産白御影石
創作者は石工彫刻家 隣村福光いち坪内悦次おもや石材店 坪内正史です。

温泉を吐き出す吐泉龍は天与の大切な温泉の飲用普及が目的で建立しました。飲泉塔建立と時期を同じくして、蓑笠をかむった狸姿の温泉津松溪山窯焼飲用オリジナルカップを創作し、来湯者に随分喜ばれました。

私の子供の頃(昭和初期)の飲用コップは青い竹を切って作った湯呑み茶碗位の竹筒が用意してありました。1回の飲用量はワンカップ五勺位を時間を掛けて静かにゆっくりとお腹に注ぎ込むように飲むとよい。泉薬湯の何百年の入浴体験の蓄積から伝承されている飲泉の効能は、貧血ぎみな人には増血作用、便秘で悩んでいる人には下剤作用、食べ過ぎや消化機能の弱っている人には消化増強作用などを指摘しています。

戦後(昭和三十年頃)原爆被爆者の療養にも当温泉の飲用は良い効果をもたらしていると報告されています。近年は糖尿病予備軍の血糖値の改善に験があるとの多くの情報も流れています。当温泉の持つ飲泉の不思議な効果は、入浴の不思議とともに、世間に知れ渡っています。

泉薬湯温泉津温泉元湯の温泉水を、飲用効果のある温泉水として飲まれる様になったのは、何時の時代頃かは判りませんが、280年前に飲泉をしたと思われるつぎの記述があります。

29日、風が良く舟を仕出立て、又、湯の津に舟を寄せありし観音堂に上がり宿る。
かりまくらここを舟路の中宿と思う津にしも漕ぎ帰りぬる。
また夜昼湯あみす、この度の行き来におもわずこの津に四、五日安らいて、湯あミけれハかねて疝痛をいたく具しケるも、名残無きまで平かなりぬ。
この湯を含ミ試むるに、しハハゆくして有間の湯に気味ひとしく覺ゆ。身を温むることこよなし。・・・速効はなハだし、無双の妙湯ならんか。(鴨山参詣記 釈釣月1723 享保8年)
疝痛せんつう (はげしい発作性の間歇的腹痛。腹部内臓諸疾患に伴う症候で、胆石症発作・腎石発作・腸閉塞などに際して現われる)

鴨山参詣記の記者釈釣月は、従来より、はげしい発作性の間歇的腹痛が現われる持病の疝痛持ちであるが何もなかったようなもとの元気な姿になった。この湯を飲んで見ると、しハハゆく、有馬温泉の湯の味と同じと思う。体が温まること、このうえはない。速効はすごい。二つとない不思議な温泉だ。と記しています。

(藤昇)

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