目次  研究概要  研究の実際(技術分野家庭分野 特別支援教育  まとめと今後の課題  学習指導案(技術分野家庭分野) H17年度研修会

 

2.研究の実際

 

〔技術・家庭科〕

 

技術分野

 

(1)技術分野におけるめざす生徒像

 

 

@

互いに支え合い学び合いながら、知識や技能の習得をめざす生徒

 

 

A

 

生活に役立つように創意工夫して構想した作品の完成をめざして、加工方法等を粘り強く追求し、最後まであきらめずに取り組む生徒

 

(2)研究内容と実践例

 

 

@

互いの学びのよさを交流し高め合うための場の設定(仮説Aに関連して)

 

 

 

基礎・基本を確実に定着させるために「技術とものづくり」の製作学習において、二人一組を基本単位としたペア学習やいくつかのペアをまとめたグループ学習を行った。

 

 

 工具や機器の使用方法についての一斉指導に関して、個々の生徒で理解力や技能が異なる他、経験の不足から一人で製作するのに不安を感じる生徒もいる。また、教師一人で生徒一人一人をきめ細かく個別に支援することは困難である。そこで、ペアまたはグループで製作学習を行うことによって、生徒同士がお互いに協力して支え合い、学び合いながら基礎・基本の定着が図れると考えた。

 工具や機器はできるだけ二人に一つ準備し、数が不足するものはいくつかのペアをまとめたグループで製作を行うようにした。工具や機器の使用方法やチェックポイントを明らかにし、生徒同士が互いにチェックできるようにして製作に取り組ませた。そして、学習後は、友だちからのアドバイス、自己評価や反省・感想を学習プリントに記入することによって授業の振り返りを行わせた。

 のこぎりびきを行った後に記入した学習プリントの友だちからのアドバイス欄には、

「のこぎりを真上から見て切ろう。」

「のこぎりは引くときに力を入れれば切りやすい。」

「切り始めは指を案内にする。」

などの記入や、感想欄には、

「友だちと協力して製作できた。この調子で次もがんばる。」

「ペアの○○さんがいろいろアドバイスしてくれて、うれしかったです。」

「○○くんも上手にできていました。」

「ちょっと曲がったところもありましたが、○○くんのサポートに助けられてうまく切れました。」

などの記入が見られた。

 

 

 

A

 

指導内容の工夫改善仮説Bに関連して

 題材は、生徒個々の興味・関心に応じた自由題材とした。

 

 

 題材を教師側で決めてしまうことは、生徒のやる気や発想を妨げるものと考えたので、一年次にいろいろな材料の特徴を学習し、加工方法を学んだ後、二年次に生徒個々の興味関心に応じた作品を自由に製作させることにした。その過程で、材料の選択や加工方法について生じた課題を自分で考え判断して主体的に解決していく力がつくものと考えた。

 ほとんどの生徒は、意欲的に構想を立て、寸法の設定や材料の選択をしていった。生徒の中には、いすや机をつくりたいというものもいたが、角材を使った製作はほぞ接合など加工方法や工程が複雑になるので、今回の製作では見合わせるように指導した。また、自由題材なので、構想を膨らませる生徒もいるが、一方なかなか構想がまとまらない生徒もいた。さらには、経験が乏しく、構想はいろいろできるが、実際の加工方法や材料の選択に悩む生徒もいるので、構想の段階で教科書や先輩の作品例を参考にしながら、教師からアドバイスしたり、自分で考えさせたり、友だちと相談させたりしながら、時間をかけてまとめさせた。

 しっかり構想を立てて製作に入っても、構想通りに加工ができなかったり、実際に部品を加工していく段階で、寸法や材料、加工方法の変更を申し出る生徒もいた。その場合、側板の形の変更や、棚板を木材からアクリルヘの変更、かきつぎから打ち付けつぎへの変更、部品の寸法の変更等、多少の変更なら許可して、製作を進めさせた。

   

     

失敗したり、苦労を重ねたりしながらの製作であったが、生徒の作品完成後の感想には、

「製作は楽しかった。シンプルだけど、いい作品ができた。」

「自分なりに満足のいく作品ができた。次に機会があれば、使用方法や寸法などをよく考えて、もっと工夫した作品をつくり上げたい。」

「失敗したところがあったが、完成して良かった。家で大事に使いたい。」

というようなものが見られた。

 

 

(3)まとめと今後の課題

 

 

@製作学習において、ペア(グループ)学習を行ったことについて

 

 

生徒は、自分が正しく工具や機器を使用して製作していると思っているが、工具や機器の使用方法を誤っていたり、姿勢が正しくなかったりする場合がある。しかし、ペアまたはグループで製作したことで、互いに工具や機器の使用方法や姿勢について指摘し合い修正し合いながら、協力して製作することができた。

 

 

今まで教師に頼っていた部分を、生徒同士で支え合い学び合いながら学習することができ、時間や少ない工具や機器も有効に使用することができた。また、生徒同士による技能の定着も図れた。

 

 

生徒の製作学習後の反省・感想等より、生徒同士が互いに技能を高め合いながら製作を行い、信頼し合う関係もできていることがうかがえた。

 

 

今回は、製作学習においてペアグループ学習を行い、上記のような成果を得ることができた。しかし、いろいろなものの見方や考え方を理解させ、他から積極的に学ぼうとする生徒を育てていくためには、「互いの学びの良さを交流し高め合う場」を製作学習以外の場面でも積極的に設定する必要があると考える。例えば構想をまとめる段階では、アイデアスケッチや構想図を発表し合うことを通して、友だちが創意工夫していることに気付かせ、それを自分の作品づくりに生かさせるなど、生徒の思考力や表現力を高めていくための授業をめざして、今後は取り組んでいきたい。

 

 

A題材を自由題材としたことについて

 

 

ほとんどの生徒は、自由題材としたことで意欲をかきたてられ、製作段階でのつまづきも自分で考えたり、ペアグループに相談したりして、根気強く取り組んでいた。その結果、創意工夫したオリジナル作品をつくり上げ、成就感を感じているものも多かった。

 

 

今回の製作で自分のつくりたいものを構想し、失敗したり、苦労を重ねたりしながら部品の一つ一つを丁寧に加工して作品をつくり上げたという経験や成就感は、生徒自身の自信になり、ものづくりだけにとどまらず、今後の生活で生じたいろいろな課題に取り組む意欲を培ったと考える。