2.研究の実際 |
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〔家庭分野〕 |
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(1)家庭分野におけるめざす生徒像 |
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互いに協力し学び合いながら、知識や技能の習得をめざす生徒 |
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A
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体験活動や日常生活の中から課題を見つけ、その解決に向け工夫し、進んで取り組む生徒 |
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(2)研究内容と実践例 |
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@ |
指導方法や指導体制の工夫改善(仮説@に関連して) |
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基礎的な知識や技能の定着を図るため、地域講師を活用し、きめ細かな指導を行った。 |
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○ |
生徒への実態調査の結果から、学習した内容が実生活の中であまり生かされていないことが分かった。生徒が日々の生活を自分なりに整えたり、よりよく改善したりしていくためには、関心意欲を高めることや基礎的な知識や技能を身につけることは不可欠である。
そこで、新たに学習する内容と既習事項に関連をもたせ、繰り返し学習または実践できるよう、「衣服の手入れ」で学んだ手縫いの技法を、「おもちゃの製作」に活用させるなどの工夫をした。
実習や体験においては、地域講師を活用してより専門的な立場から指導いただいたりティームティーチングでの指導を取り入れるなど、指導体制を工夫した。昨年度までは、幼児のおやつの実習に栄養士を招いて、ティームティーチングで調理実習を行った。今年度は、おやつの実習だけでなく、計画や反省・他の学年の授業でも、ティームティーチングを取り入れ、生徒のつまずきに少しでも対応できるようにした。 |
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A
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指導内容の工夫改善(仮説Bに関連して)
生徒のより高い興味・関心を引き出すために、体験活動を取り入れた。 |
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○ |
「わたしたちの成長と家族」では、中学生の日常生活において幼児は関係が希薄な存在であり、そのために学習内容が深まりにくい傾向にあると思われる。体験的な活動を取り入れることで、幼児とのふれあいの場をつくり、幼児をより身近な存在としてとらえ、今後の学習意欲へとつなげていきたいと願ってはいたが、授業時数が削減されたことや一度に40人もの生徒を受け入れていただくのは難しいことなどから、家庭分野の時間における体験活動は見送ってきた。
しかし、幼児の学習を進めていくにつれ、生徒たちの中からも「保育園で体験したい」という声が聞かれるようになってきた。そこで、総合的な学習の時間との関連を図り、幼児とのふれあいを体験させることで、幼児をより身近な存在としてとらえさせ、自己の成長過程を振り返らせるきっかけの一つとした。体験先の保育園や地域の関係施設(子育て支援センター・益田手作り絵本の会等)から学習に関連する資料を提供していただき、それらの活用により学習が深まるよう配慮した。
体験活動に際しては学年部とも連携を図り、計画・運営を行った。総合的な学習の時間のねらいと技術・家庭科(家庭分野)のねらいを明確にし、生徒はもちろん、体験先へも事前に知らせ、体験したことが後の学習に生かせるようにした。また、幼児への理解を深める事前学習では、家庭分野担当者が中心となって総合的な学習の時間を進めていった。
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体験活動当日は、最初戸惑っていた生徒もいたが、次第に慣れ、積極的に幼児と関わろうとする姿が多く見られた。体験後の感想では、「園児も楽しそうだったけど、私も楽しかった。」
「園児が僕に話しかけてくれず、はじめはどうなるかと思ったけれど、だんだんなじんできて、最後には仲良くなれました。」「園児は、とてもかわいかった。」「終わった後、友だちと『また行きたいね。』と話しました。」等の意見が多く書かれていた。また、「子どもはいろんなことを知っていると思った。自分もそうだったかな?」
「自分は園児より早く生まれたのに、後から生まれた子どもたちに学ぶことが多かったと思う。」「僕も保育園の頃は、こんなふうにしてもらっていたんだな〜と思った。」「友だちのよいところを見つけることができた。この体験をしてよかったと思う。」「保育士さんの大変さが分かったような気がする。」など、自分自身の成長の振り返りや、他者のよさについての気付きを書いた生徒もいた。
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体験後に取り組んだおもちゃ製作では、体験先の保育士さんから伺ったお話や、保育園で幼児が遊んでいた遊びを参考に、自分が関わった子に使って欲しいおもちゃを考案する生徒が多数おり、製作活動の意欲づけに役立った。 |
おもちゃの製作カードNo.1
3年 組 番 氏名
○○保育所、○○幼稚園、○○乳児園の子供が喜ぶおもちゃを考えよう
どんなおもちゃを作りますか? |
およその年齢は? |
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どんな遊び方をするの? |
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どんな能力を育てるおもちゃにしたい? |
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考えたおもちゃの図 |
( )君・さんからのアドバイス
記入者( ) |
次の時間に検討しなおすことは?
(さらに工夫する点・改良点)
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(3)まとめと今後の課題 |
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@指導方法や指導体制の工夫改善について |
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○ |
計画から反省までの活動に地域講師を活用したことで、生徒のつまずきや疑問に対し細かな対応ができ、関心意欲を高めたり知識や技能を修得したりする上で、効果的だったことが生徒の感想等からうかがえた。 |
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○ |
授業終了後に、地域講師と情報交換をすることにより、学習に対する生徒の取り組みの様子や変容が把握しやすく、教師側の反省や次の授業での生徒への意欲づけに役立った。 |
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○ |
知識や技能の習得を図る上で、繰り返し学習することは重要な方法の一つであると今回の研究実践を通して強く感じた。また、教師がこのような方法で指導するときには、生徒にも今の学習内容と今後の学習内容
(あるいは、既習事項)との関連を知らせるなどして、学習の見通しをもたせることも必要であると感じた。 |
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○ |
生徒の意欲を高め、知識や技能の定着を図るためには、どのようにして体験的な活動や実践・実習の場面を取り入れていけばよいか、学習のねらいを明確にし、学習内容の精選をさらに続けていく必要がある。 |
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A指導内容の工夫改善について |
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○ |
体験活動を実施するにあたり、家庭分野の学習のねらいを明確にするため、生徒に観察のポイントを事前に知らせた。体験先の保育園にもねらいを事前に説明し、当日、各訪問先で生徒に話す内容に共通の項目を設けていただいた。そうすることで、その後の学習に役立てることができた。しかし、体験活動を取り入れた初年度ということもあり、生徒が感じた様々な思いや観察した内容を生徒同士で主体的に広め、進んで課題を発見するまでには至らなかった。 |
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○ |
地域の身近な保育園での体験を取り入れたことで、幼児への興味・関心・学習意欲が高まっただけでなく、ふれあいを通し他者のよさについて気付く生徒もいた。こうした生徒の変容は、「互いに協力し学び合う力」の基盤になると考える。体験活動を通して生徒が感じたこと、学んだことをこれからの学習に生かせるよう、今後も取り組みを続けたい。 |