目次  研究概要  研究の実際(技術分野家庭分野 特別支援教育  まとめと今後の課題  学習指導案(技術分野家庭分野) H17年度研修会

 

 

<特別支援教育>

 

(1)めざす生徒像

 

 

@思いやりの心をもち、人と豊かな関わりをもてる生徒

A主体的に根気強く取り組み、自信をもって課題に取り組む生徒

 

(2)研究内容と実践例

 

 

 本校には情緒障害学級と知的障害学級の二学級が設置されている。生徒の実態をみると、一人一人は明るく活動的で,自分なりに努力している。限られた人間関係の中では友だちどうし交流できるが、初めての場面では、自分の思いをうまく伝えることができなかったり、指示を十分に理解しないまま思いこみで活動してしまったりすることがある。生徒にとって、コミュニケーション力を言葉による学習だけで身につけることは困難である。体験的に生活に生かせる力として学習するためには作業による活動が最も適していると考えた。
 情緒障害学級の生徒に対しては、自立活動として対人関係の向上をねらい本単元を指導することとした。
 

  

 

@

人との関わり方が学習できるようにいろいろな集団での活動場面を設定した

   

作業の中では、準備、片づけ、製品・材料の受け渡しや、連絡・報告等の場面で、意味のある関わりをもつことができる。他の生徒と協力したり、教え合ったりして人との接し方を学ぶためには、ある程度の集団での学習が必要となる。そこで,それぞれの学級での活動、2学級合同での活動、販売活動等による多くの人とのふれあいなど段階的な集団の規模での活動場面を設定した。このことにより個々の生徒が課題とする人への接し方を徐々に体験的に学んでいくことができた。

   

人との関わりは苦手だが、作業全体を見通せる力をもった生徒を、部品の生産数や仕上がりの確認役にすることにより、その受け答えをする場面が多く見られた。また、部品を受け渡す時に相手を思いやる気持ちをもって「お願いします。」と声をかけたり、道具の使い方を教え合ったりする場面が見られた。積極的な言葉の関わりができない場合でも、作業の仕方をやってみせる、片づけを分担するなどの方法で関わることができた。

 

 

A

主体的に、自信をもって課題に取り組むことができるよう、補助具、行程、生徒による評価の工夫をした

 

 

日々の作業で補助具を工夫し活用することにより、生徒が自分で作業ができ、自信をもって作業できる。そして、製品としてのできばえも期待できる。そのことが、意欲をもって作業に取り組め、主体的な活動へとつながっていくであろうと考えた。補助具の一つは、市販の物を利用した。線に沿ってのこぎりでまっすぐに切ることが難しい生徒も、のこぎりを使った作業に意欲的に取り組めた。また、木材を斜めに固定して切ることは難しいが補助具を自作し使用したところ、自主的に補助具を設置し、意欲をもって作業に取り組むことができた。

 

 

部品作りと組み立ての作業を繰り返し行うこととした。部品作りは、六つの工程に分けて分担作業とした。そのことにより、生徒の実態にあった作業が可能となり、生徒が自分でできるということが主体的な作業や個々の自信へとつながった。また、部品の受け渡し場面や、組み立て場面で生徒どうし声をかけ合うことにより意欲の高まりを感じた。

 

 

これまで,文化祭による『御土居・七尾SHOP』の販売活動や活動展(益田市の共同学習における作品展)での発表を経験してきている。そこでは、多くの人に作品を通して声をかけてもらえ、製品の価値を認めてもらえる。生徒にとってこの体験が、よりよい良い製品を作ろう、たくさん製品を作ろう、といった目的意識につながっていくと考えられる。生徒から、「今年はいくつできるだろうか。」「今年はもっと売り上げを伸ばそう。」など意欲的な発言が聞けた。また、「売るためのものだからちゃんとしないと。」などの声もあった。これらの気づきから,個々の生徒が自ら作業の目標を設定し、互いに評価していくことにより、意欲を持続させ,長期の作業の見通しをもたせることができた。

 

(3)まとめと今後の課題

 

 

人との関わり方が学習できるようにいろいろな集団での活動場面を設定したことに関しては、確認や受け渡し、片づけなど作業途中で,互いに相手を思いやったやりとりが少しずつ見られるようになった。特定の集団では、コミュニケーションがとれるが、販売活動のような不特定の人に対して販売で必要な受け答えや、あいさつをすることは難しいと考えられる。文化祭当日のお客さんへの対応方法を生徒によっては、マニュアル化し、より多くの人と関わっていけるようにしたい。